2008年から2025年までの18年間で、日本のウォーターサーバー市場は大きく姿を変えてきました。かつては回収式ボトルを中心とした宅配水が市場の主役でしたが、ワンウェイ方式が広がり、近年は水道水をろ過して使う浄水型ウォーターサーバーも存在感を高めています。
日本宅配水&サーバー協会(JDSA)の統計では、ウォーターサーバー市場規模は2008年の383億円から2025年には2,112億円へ拡大しています。単純に市場が大きくなっただけではなく、「水を届けてもらう」ことが中心だった市場から、「自宅の水道水をサーバーで浄水して使う」という選択肢まで広がった18年間と見ることができます。
この記事では、2008年から2025年までの公開統計や市場調査をもとに、宅配水市場の拡大、ワンウェイ方式の成長、2011年前後の変化、そして浄水型ウォーターサーバーが伸びてきた流れを時系列で整理します。
2008年から始まった宅配水市場の本格的な拡大
2008年前後のウォーターサーバー市場は、現在のように宅配水・給水型・水道直結型から自由に選ぶ市場ではありませんでした。JDSAの統計を見ると、当時はリターナブル方式の宅配水が中心で、その後ワンウェイ方式が加わりながら市場が急速に拡大しています。
2008年はリターナブル方式が市場の中心だった
JDSAの統計では、2008年の宅配水市場は顧客数93万3,000台、市場規模383億円でした。統計上、この年はリターナブル方式のみが計上されています。
- 顧客数:93万3,000台
- 製造量:38万3,000KL
- 市場規模:383億円
- 統計上はリターナブル方式が中心
現在と比べると市場規模は小さいものの、2008年時点ですでに家庭向け宅配水が拡大する土台はできていました。
2008年は、回収式ボトルを中心とする宅配水市場が成長していた時期です。
2009年から2010年にかけて顧客数が大きく増えた
2009年にはリターナブル方式の顧客数が132万台となり、2010年にはリターナブル156万6,000台に加え、ワンウェイ・BIBが42万台となりました。
| 年 | 顧客数 | 市場規模 |
|---|---|---|
| 2008年 | 93.3万台 | 383億円 |
| 2009年 | 132万台 | 488億円 |
| 2010年 | 198.6万台 | 684億円 |
| 2011年 | 249万台 | 910億円 |
わずか数年で顧客数と市場規模が大きく伸びており、宅配水が家庭へ広がっていった時期だったことが数字から分かります。
2008年から2011年は、宅配水が家庭へ急速に広がった成長期でした。
2010年にはワンウェイ方式が統計に現れる
2010年のJDSA統計では、ワンウェイ・BIBの顧客数42万台、市場規模120億円が計上されています。使用後の容器を回収するリターナブル方式だけでなく、使い切り容器を採用する方式が市場の一角を占め始めました。
- リターナブル:使用済みボトルを回収して再利用する
- ワンウェイ:使用後の容器を家庭で処分する
- BIB:バッグ・イン・ボックス型の容器を使う
- 方式によって交換や保管の手間が異なる
この変化は、その後のウォーターサーバー選びで「水の種類」だけでなく「ボトルの扱いやすさ」が比較される流れにもつながりました。
市場拡大とともに選択肢が増えていった
2010年当時の市場調査でも、宅配水市場は急速に拡大している分野として扱われていました。参入企業が増え、天然水やRO水、容器方式など、比較する条件も増えていきました。
- 天然水かRO水か
- リターナブルかワンウェイか
- 水の価格はいくらか
- ボトル交換や保管がしやすいか
ウォーターサーバーは、単に冷水と温水を出す機械ではなく、水・容器・配送を含めて選ぶサービスへ変化していきました。
2011年以降に宅配水が家庭へ定着していった流れ
2011年は、ウォーターサーバー市場を振り返るうえで重要な年です。東日本大震災後には飲料水の確保や備蓄への関心が高まり、宅配水を家庭で利用する意味が改めて注目されました。
2011年に宅配水市場が大きく伸びた
JDSA統計では、宅配水の市場規模は2010年の684億円から2011年には910億円へ拡大し、顧客数も198万6,000台から249万台へ増えています。
- 顧客数:249万台
- 製造量:97万8,000KL
- 市場規模:910億円
- ワンウェイ・BIBも大きく増加
数字から見ても、2011年は宅配水市場が大きく拡大した年の一つだったことが分かります。
2011年は、飲料水の確保と備蓄という価値が強く意識された転換期でした。
震災後に飲料水と備蓄への関心が高まった
2011年に家庭用ウォーターサーバー利用者500人を対象に行われた調査では、31.6%が東日本大震災後にウォーターサーバーを導入したと回答しています。また、市販の水を「かなり入手困難だった」「やや入手しづらかった」とした回答は合計73.0%でした。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 震災後に導入 | 31.6% |
| 市販水の入手に困った | 73.0% |
| 震災後に役立った | 77.0% |
| 災害対策として利用したい | 88.6% |
一つの調査結果ではありますが、宅配水が日常の便利さだけでなく、災害時の水の確保という視点でも評価されたことが分かります。
2012年には市場規模が1,000億円を超えた
JDSA統計では、2012年の宅配水市場規模は1,170億円となり、顧客数は292万8,000台まで増えました。
- 家庭でのウォーターサーバー利用が拡大
- ワンウェイ方式の顧客が増加
- 宅配水市場が1,000億円規模へ成長
- 飲料水を備蓄する意識も高まった
宅配水は一時的なブームだけではなく、家庭で継続利用するサービスとして定着する段階へ進んでいきました。
2013年以降は急成長から安定成長へ移った
2013年以降も市場は拡大しましたが、2008年から2012年までのような急激な伸びだけではなく、増減を繰り返しながら規模を広げていきました。
- 宅配水が家庭の選択肢として定着
- 企業ごとの差別化が進む
- ボトル方式の選択肢が広がる
- サーバー機能やデザインの比較も増える
市場が成熟するにつれて、「ウォーターサーバーを使うか」だけでなく「どの方式を選ぶか」が重要になっていきました。
ワンウェイの成長から浄水型登場までの変化
2010年代後半になると、宅配水の中でもワンウェイ方式の存在感が大きくなりました。同時に、水道直結型や給水型といった「水を配送しないウォーターサーバー」の市場も形成されていきます。
2018年にはワンウェイの市場規模がリターナブルを上回った
JDSA統計では、2018年の市場規模はリターナブル740億円、ワンウェイ800億円でした。市場規模ベースでは、この年にワンウェイがリターナブルを上回っています。
- リターナブル:740億円
- ワンウェイ:800億円
- 宅配水合計:1,540億円
- 製造量:132万8,000KL
宅配水の中でも、使い切り容器を採用するサービスが大きな市場を形成するようになりました。
2018年は、市場規模でワンウェイがリターナブルを上回った節目の年です。
2020年にはワンウェイの製造量もリターナブルを上回った
2020年の製造量は、リターナブル70万1,800KLに対し、ワンウェイ75万9,600KLでした。市場規模もワンウェイ1,014億円、リターナブル709億円となっています。
| 年 | リターナブル市場 | ワンウェイ市場 |
|---|---|---|
| 2017年 | 760億円 | 670億円 |
| 2018年 | 740億円 | 800億円 |
| 2019年 | 700億円 | 860億円 |
| 2020年 | 709億円 | 1,014億円 |
この頃には、宅配水市場の中でもワンウェイ方式が主要な選択肢として定着していたことが分かります。
水道直結型と給水型という新しい選択肢が広がった
矢野経済研究所の市場調査では、水道直結型ウォーターサーバーの市場推移を2017年度から、給水型ウォーターサーバーを2020年度から追っています。宅配水とは異なり、水道水をろ過して利用する方式です。
- 水道直結型:水道管につないで給水する
- 給水型:利用者が水道水をタンクへ補充する
- 宅配ボトルの受け取りが不要
- 水の使用量が多い家庭でも比較しやすい
「水を購入して届けてもらう」宅配水に加え、「自宅の水道水を浄水して使う」という別の選択肢が加わりました。
浄水型の成長で料金体系も変わった
宅配水では、水の注文量が料金に影響するサービスが一般的です。一方、浄水型ではサーバーレンタル料を中心とした定額制が多く、水を多く使う家庭にとって比較しやすい料金体系が広がりました。
- 水の注文量で料金が変わるか
- 定額料金で利用できるか
- ボトルの受け取りや交換が必要か
- 水道水を補充する手間があるか
現在は「水の味」だけでなく、配送の有無や料金体系まで含めて方式を選ぶ時代になっています。
2023年から2025年に浄水型が急成長した市場
近年の市場で特に目立つのが浄水型ウォーターサーバーの成長です。JDSAは2023年から「浄水器形」を市場統計に掲載しており、2025年には顧客数126万6,000台、市場規模274億円まで拡大しています。
2023年からJDSA統計に浄水器形が加わった
JDSAの市場規模統計では、2023年に浄水器形が101億円として掲載され、宅配水1,722億円と合わせたウォーターサーバー市場全体は1,823億円となりました。
- 宅配水:1,722億円
- 浄水器形:101億円
- ウォーターサーバー全体:1,823億円
- 浄水器形の顧客数:72万台
統計上でも、宅配水だけではウォーターサーバー市場全体を説明できない時代になったことが分かります。
2023年以降は、宅配水と浄水型を分けて市場を見る必要があります。
2024年から2025年に浄水型が大きく伸びた
浄水器形の市場規模は2023年101億円、2024年161億円、2025年274億円と拡大しました。顧客数も72万台から102万6,000台、126万6,000台へ増えています。
| 年 | 浄水器形顧客数 | 浄水器形市場規模 | 市場全体 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 72万台 | 101億円 | 1,823億円 |
| 2024年 | 102.6万台 | 161億円 | 1,977億円 |
| 2025年 | 126.6万台 | 274億円 | 2,112億円 |
宅配水が依然として大きな市場を持つ一方、直近では浄水型の伸びが市場全体の変化を象徴しています。
宅配水事業者自身も給水型へ参入している
矢野経済研究所は2024年の調査で、宅配水市場の新規顧客獲得の伸びが鈍化する一方、大手宅配水事業者が給水型ウォーターサーバーへ参入し、戦略的に注力していると報告しています。
- 宅配水市場は大規模な市場として継続
- 給水型への新規参入が増加
- 給水型サーバーの種類が増加
- 利用者が宅配水と浄水型を比較できるようになった
宅配水と浄水型は完全に別々の市場ではなく、同じ事業者が複数方式を扱うケースも増えています。
18年間でウォーターサーバーの選び方そのものが変わった
2008年から2025年までを振り返ると、市場規模は383億円から2,112億円へ拡大しました。その過程で、リターナブル中心からワンウェイの成長、そして浄水型の拡大へと選択肢が増えています。
【18年間の市場変化】
- 2008年:リターナブル宅配水を中心に市場が拡大
- 2010年代:ワンウェイ方式が成長
- 2011年以降:家庭利用や備蓄用途への関心が拡大
- 2020年代:給水型・水道直結型が本格的な選択肢になる
- 2023年以降:JDSA統計でも浄水器形が独立して掲載
- 2025年:市場全体が2,112億円、顧客数595万1,000台へ
18年間で変わったのはサーバーの種類だけではありません。現在は、天然水・RO水といった水の違いに加え、宅配水か浄水型か、ボトル交換が必要か、定額制か、水をどれだけ使うかまで含めて選ぶ市場になっています。
2008年から2025年の18年間は、「宅配される水を選ぶ市場」から「水の使い方そのものを選ぶ市場」へ変化した期間といえます。
参考:一般社団法人 日本宅配水&サーバー協会「日本の宅配水業界統計データ」、矢野経済研究所「2024年版 ウォーターサーバー市場の現状と将来展望」「宅配水市場に関する調査を実施(2024年)」、2011年「災害と家庭用ウォーターサーバーに関するアンケート」。数値は各公開資料に基づいています。
